インドネシア・パプア州アスマットの原始美術（精霊祭り)
アスマット(Asmat)彫刻（精霊祭り三人像） 世界的に有名なイリアンジャヤ州南西部のアスマット原始美術。その芸術性の高さは、ニューヨークにあるメトロポリタン美術館に「アスマット・コーナー」があることからも窺い知ることができる。プリミティブ・アートは、日本ではまだまだ愛好家そして理解者が少ないが、欧米諸国では、芸術品コレクターにとって『いつの日か、アスマット彫刻を手に入れたい』と、垂涎の的。写真の『精霊祭り三人像』は、1997年10月にアスマットの中心村アガッツ(Agats)で開催された『アスマット芸術祭』の国際オークションでインドネシア文化宮(GBI)が落札したもの。作者はWilhelmus Ipar氏。ファイット(Fait)地区のバシム(Basim)村出身。 この彫刻の最大の特色は、その動画的躍動感、そして今にも動き出しそうなリアリズムです。木に彫られた人間像というよりも、まさに木が“アスマット（地元の言葉で「我々は人間だ」の意味）”そのものに変身しています。まるで、これから話し始めるかのような三人です。先頭には、「Jipai」と呼ばれる精霊仮面をかぶった男。彼はヒクイドリで作った骨ナイフを手にしています。貝殻もしくはイノシシの骨で作ったと思われる鼻輪を付けています。植物繊維で作ったミニの腰蓑も付けています。先頭を切って仲間を従えている割には、彼はちょっと解な行為をしています。つまり、左手で丸出しの性器を握っているのです。二番手は女性です。クスクス（なまけもの）の皮と天然数珠で作った帽子を被っています。手には黒い石器を。三番手は男性です。彼もクスクス帽子を被り、砂時計型のアスマット太鼓を打ち鳴らしています。全員が体を白く塗りたくっています。いわゆる儀式の正装です。この彫刻にはアスマットの三原色ともいうべき白（貝殻粉）、黒（炭・煤）、そして赤（もしくは茶。赤土や動物の血液）が満遍なく使用されています。アスマット原始美術のティピカルな好例と言えましょう。一本の鉄木もしくはマングローブ材を削って創作した一刀彫りです。 アスマット地方の神話である「フメリピッツ（創造主で“風の人”の意味）」に拠れば、天から地上に降りてきた創造主は、丸太をくり貫いて男女の像を彫った。次に太鼓を作った。トカゲの皮で覆って、太鼓を打ち鳴らすと、その男女の人形は立ち上がり、リズムに合わせて踊り、歌い始めた。そうして人間としてのアスマット人が誕生した、と。つまり、人間は木から生まれたという神話です。太鼓は母でもあるのです。ちなみにアスマットとは、地元の言葉で「真実の人間」、「我々は木だ」を意味します。木から生まれたと信じるアスマット人は、死ぬと身内の手で木の彫刻になります。この神話に根ざした風習によって、アスマット地方では、彫刻文化が異常に発達したわけです。しかし、木から生まれたと信じるアスマットの人々は、密林との共生を今でも続けています。“森こそわが命の源泉”と考えています。なんとエコロジカルな生き様なんでしょうか。 サイズは台座の全長が96.5cm、幅が21.5cm。最大高41.5cm。人物像は先頭から順に、高さが28cm、30.5cm、32cm。全体の重さはおよそ4kg。 尚、アスマット彫刻に関しては『Asmat Art:Wood Carvings of Southwest New Guinea』(Periplus社刊)を参照されたい。送料は当方で負担いたします。
（注）三枚目の画像からも分かりますが、左耳の先端部が欠けています。予めご了承お願いいたします。 インドネシア文化宮は、インドネシアの24時間ニューステレビ局『メトロTV』東京支局がプロデュースするインドネシア情報発信基地です。
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